皆様は「精索静脈瘤」という病名をご存じでしょうか?
精索とは、精巣につながる血管などの束のことで、精索静脈瘤とは精巣の静脈が、うっ血や逆流して拡張した病態のことを指します。
解剖学的に通常は左に生じることが多いのですが、正常男性でも10~15%程度は精索静脈瘤があるとされていますが、一部の症例は、精巣の働きに少なくない悪い影響があります。
精巣の働きとは、一番は精子を作る働きで、二番はテストステロン(男性ホルモン)を産生することです。
特に精子を作る細胞はデリケートで環境変化の影響を大きく受けやすいのです。
この精索静脈瘤のため、精巣の温度が上昇することが一番精子を作る細胞にはダメージが大きいのです。
通常の場合、精巣は体温より2~3度温度が低くなっており、その状態で初めて精子の産生が順調に行われます。
また、静脈血液逆流に伴う酸化ストレスなども悪い要素と言われています。
男性不妊症において、精子が少ない(乏精子症)精子の運動性が悪い(無力精子症)などの原因の60%程度が精索静脈瘤にあるともされており、男性不妊症にとっては、大変重大な疾患の一つなのです。
下記のホームページも参照なさってくださると幸いです。
医療法人男健会 北村クリニックのホームページ:https://kitamura-health.com/varicocele.html
治療は手術療法です。そしてその手術療法も最も安全性が高く、確実なのが顕微鏡下の精索静脈瘤手術になっています。
医療法人男健会 北村クリニックでも精索静脈瘤手術は、局所麻酔にて30~40分程度の手術時間で、日帰りで手術を行っています。
また顕微鏡下に丁寧に処置を行い根気よく迅速に静脈瘤のみ選択的に処置していく方式をとっていますので合併症発生率も極めて低いものとなっています。術後10分程度の休憩のみでほぼ全症例が笑顔で元気に歩いて帰宅可能となっているのが現状なので、手術に対しての恐怖心は持つ必要はほぼないものと思います。
2018年4月からは健康保険適応ともなりましたので、片側のみ手術の場合でも3割負担の保険で、おおよそ4万円程度の負担であり、両側手術の場合でも7万円程度の負担で手術が可能です。
当然、医療法人男健会 北村クリニックでも健康保険適応にて手術を行っています。ただ、国内では、今でも健康保険外・自費診療で精索静脈瘤手術を行っているところも一部あるようなのでその場合には患者さんの費用負担がかなり増えることが多いので、事前にしっかりお調べになることをお勧めします。
精索内部の悪い静脈瘤の処置(結紮切離や焼灼切離などで血流遮断すること)をすることで精巣の悪い血液循環が改善され、精子の産生が改善されることが手術の目的です。
術後は3~6ヶ月程度の時間の経過とともに、約70%程度の症例で精子データの改善が有意に認められます。
実際のところ、比較的多くの症例が当院でも精索静脈瘤の手術を受けておられます。平均一週間で2~6症例程の顕微鏡下精索静脈瘤手術を行っているのが現在の当院の状況です。日常的に精索静脈瘤手術の症例が治療をされているのが実態であり、男性不妊症、男性科、そして妊活の問題においては極めて重要な疾患であることは覚えておいていただければ幸いです。
■精子が少ない
■精子の運動が不良
■陰嚢の一部が腫れている
■精巣の違和感がある
など 精索静脈瘤に関連する症状がある場合にはお気軽にご相談ください。
著者:医療法人男健会 北村クリニック 院長 北村 健